オンラインのワークショップは、アフターコロナの時代に普及するのでしょうか?
結構これは大きな問題で、ビジネスにワークショップを積極的に導入してきた自分としては、今後の動向や趨勢が非常に気になるところです。なので、オンライン会議やセッション、オンラインワークショップ(以下「オンライン」に略称して表記)への参加や実施を通じて感じたこと・気づいたことを振り返り、そこで気づいた点を整理してみました。
① オンラインがうまくいった!と事後に感じた場を振り返ると、事前に場の目的が共有され、参加者のレディネスが高い状態でオンラインの場が運営されていることがほとんど。これは確かだと思う。
② 逆に、オンライン開催の目的が明確でない場合、不満感が強くなる。リアルの場で参加したワークショップに不満を感じる場合もあるが、自分はリアルよりもオンラインのほうが強く感じた。
③ オンラインがうまく廻る場は、比較的同質的なコミュニティやネットワークからの参加者により構成されている(気がするだけかもしれないが)。集客や応募が、声をかける人のネットコミュニティを軸にしているから、という理由だろう。
こんなことをつらつらと整理していると、とても嫌な記憶を思い出してしまいました。
これって、予定調和的で内輪ウケのする、退屈系ワークショップの特徴と同じじゃねぇぇぇ。。。。?
自分は、かれこれ14年前に出した本の副題を、今もいたく気に入っています。
「ワークショップ〜偶然をデザインする技術」という本ですが、この本の副題には強い想いが込められています。そもそもイノベーションは偶然にしか誕生しないものなので、偶然を生み出す環境を(擬似的にでも)構築することがワークショップの役割だと私は本気で考えているからです。これが、ワークショップをビジネス革新に導入すべきだと20年以上言い続けてきた理由です。
そうなると、本来偶然をデザインすべきワークショップが、偶然をデザインできない環境下で実施しても、イノベーションを生み出すことはできません。それは、ワークショップと呼べるモノではないでしょう。当然、イノベーションを志向するワークショップなど論外です。
つまり、オンラインで実施するワークショップの最大の欠点は、表題にも書いた通り「偶然をデザインできない」という点に尽きるのではないでしょうか。
今のような状況下にあっても、クライアントからワークショップの企画依頼があったりするのですが(助かります!)、その際どうしてもできないアクティビティがあります。
ワールドカフェです。
ワールドカフェは、かなりの部分を偶然性に委ねるスタイルであり、だからこそ実施には勇気が必要です。ただしイノベーションの種は確実に蒔くことができます。これをオンラインで置き換えた場合、リアルと同様の臨場感=「何かが生まれるかもしれない感」をつくることはできるのでしょうか?自分に問いかけてみると、自分には「できません」という言葉しか出てきません。おそらく無理なのではないでしょうか。
もしオンラインでワールドカフェを実施する場があれば、参加したいです。そんな場を知っている方は是非僕に声をかけてください。自分の考えが正しいのか、それとも自分の不安が杞憂に終わるのかは、自ら体験してみないとわからないので。
こんなことを考えているからでしょうか。最近は「オンラインのリモートワークで十分やっていけます」という企業人の話を聞くと、強い違和感を感じてしまいます。同時に、そう言っている人が所属する企業は、よっぽど内向きなんだろうなぁ、とか、偶然性は全て排除されているんだろうなぁ。。。とか、ネガティブな印象しか感じません。
オンラインのワークショップをうまく回すためのポイントを、もっとblog で書こうかと思ったのですが、それよりも、オンラインの限界について考えた方が面白そうなので、そちらにエネルギーを注ぎますね。
次回、もう少し深掘りしてみます。
この春から大学生相手に遠隔授業ばかりやっています。特に演習系の授業の進め方は、オンラインワークショップ同然になりますね。先日は、スポーツの活用による社会課題解決の可能性を3年生に考えてもらったのですが、あらためて感じたのが、スポーツのように一見なじみのある言葉について、今その発言はどのような意味で使っているのかを参加者の間で共有することの大切さでした。その一例を挙げると、「する」スポーツの文脈で発言しているのか、「みる」スポーツの文脈で発言しているのかという話です。同じ3年生でも、たまたま履修登録した授業が同じかつさらにその演習グループで一緒になっただけとなると、Zoomのミーティングでは話しにくそうな印象を受けたので、Slackによるグループ・ディスカッションへ切り替えたのですが、LINEノリというか、他者と対話している意識が薄れる学生が何人かみられました。
伊丹敬之は、場の境界設定のあり方として、メンバーシップによる境界設定、問題による境界設定、空間による境界設定を挙げました(伊丹、2005)。ZoomやSlackを演習系の授業で使ってみた経験だけからいわせてもらうと、空間による境界設定をどのように考えるかが、オンラインワークショップを考える重要な論点になると思います。