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  • 中西 紹一

オンラインワークショップのデザイン〜②参加者のレディネスが問われる(続)

今回も前回に続き、オンラインワークショップにおける参加者のレディネスについて考えてみました。

本題に入る前に、読み手の皆さんにはお詫びをしないと。というのも、この表題は正確には「オンラインワークショップにおいて、主催者(ファシリテーター)側は参加者のレディネス向上にいかに配慮すべきか」ということですね。少々正確性を欠いていました。

前回の繰り返しになりますが、レディネスとは教育心理学でしばし登場する用語で、通常は学習による行動変容が効果的に行われるために準備された心身の状態を指す概念とされています。例えばワークショップの参加者がどれだけ興味や関心をもって課題にアプローチできるか、またその心身の状態をいかに短時間につくりあげるか、という内容がレディネスにあたるものだと思います。アイスブレイクで場への期待感を醸成するアクティビティなどは、まさにレディネスの形成に当たる部分ではないでしょうか。

リアルで実施するワークショップの場合、いわゆる「上手な」ファシリテーターはレディネスを高めることが上手なんですね。ちょっとしたアイスブレイクで、すぐに参加者のやる気や参画意識を高めることができるんです。「ファシリテーション上手いね!」と思えるファシリテーターの方は、皆このスキルを有しています。ただし、これがオンラインの場合非常に難しいのです。なぜ難しいのでしょう?

これを解くキーワードは、知覚の身体性にあると僕は思っています。

知覚の身体性???難しそうな言葉ですが、難しく言っているだけで、僕らが日常生活の中で普段から身につけている感覚なのでご安心を。

例えば僕らは日常的に、自分の体験を他の人に伝えますよね。あの店のラーメンが旨かったとか、あの商品のキャラクラーがかわいいとか。その際、話の対象の魅力を熱心に語るとそれを聞いた人は本当にラーメンを食べたくなったり、キャラクターが欲しくなったりします。この感覚こそが、知覚の身体性の例といえます。カラダで感じられるような感覚をコミュニケーションから得た時の感覚、つまりカラダを通じて理解できた感覚が、知覚の身体性だと私は考えています。

知覚の身体性をググると、例えば人工知能はカラダをもっているわけではないので知覚の身体性自体がなく、これが人工知能の限界だと指摘した興味深いblogも公開されています(東大情報学環・高木聡一郎先生のblog)。非常に面白いです。是非参考にされると良いと思います。

https://soichirotakagi.wordpress.com/2017/09/13/%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E7%9F%A5%E8%83%BD%E3%81%A8%E8%BA%AB%E4%BD%93%E6%80%A7/

ZOOMワークショップの場合、コミュニケーションで活用する感覚は視覚と聴覚だけです。それ以外の感覚はあまり使用されません。ただしリアルのワークショップでは触覚や嗅覚、味覚など、あらゆる感覚を総動員してアクティビティを実施したほうが、参加者にとっても楽しくわかりやすい、かつ参加意識が高まる場づくりが可能です(経験的な話で実証されているわけではありませんが…)。身体性を伴うコミュニケーションは、おそらくレディネスの向上には不可欠な要素なのでしょう。

リアルのワークショップで、開始時にアイスブレイクをしっかり行う理由は「レディネスを高めるため」と言いましたが、その際に実施するアクティビティやプログラムは、五感をフル活用する=身体性を伴うコミュニケーションをあえて実施することが多いです。そして、そのような活動を通じて、「この場は自分の意見を好きに話してもいいんだな」とか「この場であれば、自分の意見に耳を傾けてもらえるんだな」という感覚を想起させているのだと私は考えています。このようなアイスブレイクを通じて、個人の知識量や情報量はこの場ではあまり重要ではありませんよ、ということを間接的に参加者に伝えているわけです。アイスブレイクがワークショップにおける重要なスキルと言われている理由は、おそらくここにあるのではないでしょうか。

ただしオンラインワークショップは、あくまで視覚と聴覚だけの世界です。そのためリアルの場合と異なり、五感をフル活用してレディネスを高めるアクティビティは通常実施できません。自分自身も、オンラインワークショップで最も難しい場面はスタート時のレディネス形成だと感じています。

では、この課題にどのように対応していくとよいでしょうか?

誰でもできる簡単なアクティビティとしては、たとえばオンラインワークショップのスタート時に、「みんなと一緒にお菓子を食べる」とか「コーヒーを飲む」など飲食を同時に行い、それをネタに対話をスタートさせるといった工夫が必要かもしれません。具体的には、オンラインワークショップの参加者を募集する際、たとえばワークショップ主催者が事前に「自粛で食べる機会が増えたお菓子を持ってきてください」と声をかけるという配慮です。

視覚と聴覚のみで成立するオンラインワークショップに、あえて飲食という味覚・触覚・嗅覚の世界を割り込ませることで知覚の身体性を呼び起こし、リアルと同様の場の感覚を想起させ、参加者のレディネスを向上させるというデザインは「あり」だと私は考えています。つまりリアルの場と同様、オンラインワークショップのスタート時に五感すべてを使うアクティビティを行うことで、参加者の期待感やワクワク感=レディネスの向上は可能ではないでしょうか?当然エビデンスはありませんが…

コロナ自粛の中、ZOOM飲み会が定着しつつあるようですが、この現象もまた案外オンラインの世界で遮断される「味覚・触覚・嗅覚」の世界を擬似的にでも取り込もう、という生活者の想いがカタチになったから誕生したのかもしれません。

この話はきりがないので、このあたりで終了します。

本当に止まらなくなるので。。。

私の友人の宮脇靖典さん(岡山理科大経営学部教授)の見解は、次回か、またの機会に紹介したいと思います。

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