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執筆者の写真中西 紹一

サカナクション、パンクロック、そして学校という存在

音楽のこと、そして自分がいつも考える音楽の「捉え方」について、一回はblogに書いてみたいと思い、今回はちょっとだけロックの話をします。

といっても難しい話ではありません。

10年ほど前、結構ビックリした楽曲がサカナクションのメジャーデビュー曲『三日月サンセット』でして、特にミュージックビデオを見て衝撃を受けました。

サカナクションのミュージックビデオはどれも秀逸で、特に『アルクアラウンド』などは2010年の文化庁メディア芸術祭エンタテイメント部門で優秀賞を受賞したりと、表現も内容もかなり刺激的なんですよね。『バッハの旋律を夜に聞いたせいです』の分身くん(山口人形)には思わず大笑いしてしまいました。凄いクオリティですよね。

ただ『三日月サンセット』の映像に関しては、何の仕掛けもありません。ただ山口くんが淡々と歌いバンドメンバーも淡々と演奏している、それだけのミュージックビデオです。だけど驚いた。本当に驚きました。なぜなら全員が車座のような位置につき、内側に向かって歌い演奏しているからです。外に向けてではなく、内に向けて歌っているんですね。こんな内向きなロックバンドは見たこともないし、そもそも古い人間からすればロックは自己の解放を目指す抵抗の音楽だと思っていたので、本当に腰を抜かしてしまいました。

古い話になりますが、ロックは1960年代に確立した一種の対抗文化=カウンターカルチャーです。メインストリームの文化や伝統、秩序といった社会価値に対して強烈な抵抗を示すのがロックの根っこにあります。それが極端なカタチで表舞台に登場したのが、Sex Pistols(以下ピストルズと表記)によるパンクロックの登場でしょう。あれは凄かった。

特に1977年、ピストルズはイギリス国歌と同じタイトルの『God Save the Queen』をリリース。当然放送禁止に。その後エリザベス女王戴冠25周年を祝う式典に合わせて、テムズ川でイギリス議会の前を通りながら『God Save the Queen』を大音量で演奏。確か不敬罪か何かで逮捕されたと記憶しています。

ピストルズは一種のアナーキストですが、自己の解放を目指す当時の若者たちにとって、これまで社会を支配してきた伝統や秩序、それを支える権力構造は目の上のこぶです。そしてその象徴を王室とし、ピストルズは音楽を通じて女王に向かって強烈なNO!を突きつけたわけです。その意味でパンクロックは、既存の権威や権力への抵抗の音楽だといえます。

パンクロックの潮流は日本にも訪れますが(例えば遠藤ミチロウ率いるスターリンなど)、圧倒的な人気を獲得したパンクバンドはおそらく The Blue Heart でしょう。私もかつて大ファンで、川口までコンサートに行った覚えがあります。

ピストルズが敵とした権威・権力とは、王室や貴族階級などイギリスを支配していた伝統的特権層だったのですが、これが日本に輸入され、The Blue Heartの手にかかると、抵抗する対象が日本の学校システムに変化するのです。

The Blue Heart のデビューアルバムで『ロクデナシ』という名曲があるのですが、またその歌詞が強烈で、「劣等生で十分だ はみだしモノでかまわない」と語りながら、曲の後半に「生まれたからには生きてやる」と絶叫するわけです。初めてこの曲を聴いた時「ああ、学校で先生に『お前なんか死ね』とマジで言われたんだな」と直感的に感じました。初期のThe Blue Heart の楽曲は、おそらくヒロトくんやマーシーが学校で先生から散々言われ続けた罵詈雑言なんだなぁ。。。と思ったわけです。The Blue Heart は、そこに戦いを挑んだのでしょう。

日本における学校とは、社会秩序の形成そのものを体現した存在で、社会の縮図そのものなんでしょうね。そして社会に見え隠れする権威や権力、秩序といったものは、学校の中で私たちに無意識のうちにすり込まれてきたのでしょう。「学校こそが社会」という世界と戦え、そこから自己の解放は始まるのだと、The Blue Heart は訴えたかったのだと思います。

サカナクションから随分離れてしまいましたが、本来ロックは自己の解放を目指し、それを阻む存在に対し音楽で抵抗するという要素をもっています(パンクロックはその極端な例)。しかし最初に書いたサカナクションの『三日月サンセット』には、抵抗というイメージは全くなく、外に対して自己を解放する表現もありません。内に、とにかく内に『潜っていく』表現に徹しています。これが、これまでのロックとは根本的に異なるサカナクションの世界観です。極めて特殊で、そして既視感のない世界だからこそ、自分は衝撃を受けたのでしょう。加えて、このような『内に潜る』世界観を若者層が支持したこと、これをどのように解釈すべきか、実はまだ答えは見つかっていません。非常に興味深いテーマだと感じています。ただ、サカナクションのようなバントが支持されたこと、日本の若者も捨てたもんではない、けっこうイケてるじゃないか、と安心した感覚もよぎりました。年とったからですかね。

音楽は、社会の映し鏡のような存在です。社会の空気を一番感じることができます。

サカナクションに熱狂する人は、次に何に熱狂するのでしょうか?

そんなことを考えて音楽に触れると、結構いろんなことが見えてくるので、まだまだ音楽シーンからは目が離せません。特に崎山蒼志くん。これからどこに向かうのかなぁ。。。

音楽はやっぱり面白い。




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